恋をすればいつもこう

何もできなくなる

ただぷかぷか何かの上に浮いている

小さい頃からずっとこう

 

当時と比べると

まだ生活はできるくらいに成長したけれど

それでも気付けばぼうっとしてしまう

この気持ちを持て余し

やりどころに困惑しながら

結局大切に抱えてしまう


目の前に集中できなくて

眠い夜も眠れない

困っているはずなのに暖かくて

甘くて少しだけ苦い


実質の恋と

恋に恋する恋と

しっかり見極めなくてはいけなくて

だから目を凝らしているのに

気がつけばまた元通り

本当に困ってしまう


世界の人はこの気持ちを

どんなふうに提げているの

どんなふうに飲み込むの

誰も教えてなんてくれなかった

仮定

どこにでもないこの空間へ

いつから純粋に誰かを好きになれなくなったんだろう
心当たりはある

世界の何にも囚われないならば
誰を心から愛せたのだろう

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あの日
たった私たちだけがキンモクセイの風を受けていた帰り道
私たちは初めて繋がった

あの日
少しお酒に酔ってしまった店内
私たちは特別になった

あの日
最後の数時間 きみが私の荷物を引いた時
私たちは完璧だった


最初から最後まで合わない私たちは
きっと逆方向から歩いてしまったんだね

だからあれは お互いがすれ違う瞬間で

「季節ようつろわないで」

最初と同じところへ戻っていく関係
特別は手から水のようにこぼれ落ちてゆく

何かが欠けてしまったのに満たされたように見える私
立ち位置はどんどん離れていく

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共有したい景色ばかりに囲まれながら
特別は次々とこぼれ落ちた
季節にのまれる私たち
見えなくなってしまうほどの距離
誰にも逆らえない流れ

もしも私に残された時間を伝えたならば
きみは一度くらいこちらを振り向いただろうか

東に

どうしても、東京に行きたかった。

それは、きらびやかなお店への憧れだったのかもしれないし、 出会いの多さへの期待からかもしれないし、 あの雑踏の中に、普通じゃない自分が溶け込む余地を感じたからかもしれなかった。

東京に住む人たちはみんな、心の奥底で東京以外を見下している。そう見えるか見えないかは、当人たちがそれを意識しているかしていないかだけの違いだった。ゆるやかに刺しこまれていく刃物。

何もかもの1番を奪っていく場所。それはお金持ちのお嬢様のような。 決して越えられない何か。生まれながらに運命は定められていて、オンリーワンを見つけようともがく私の上を優雅に過ぎ去っていく。

片田舎に住んでいては考えられない層の人種がいて、彼らの世界のスケールは何万単位で違う。

東京はまるでタチの悪い女たらしのように駆け引きがうまくて、苦しくなるほど恋い焦がれてしまう場所だった。冷静になれば何ともないことだってわかっているのに、それでも思わずにはいられなかった。  

beginning to look a lot like...

 

暖かい部屋で

ふかふかのソファーで

淹れたてのカフェオレを飲みながら

弦楽アレンジされたクリスマスソングとともに

外をぼんやりと見つめる

その時間の幸せといったら…!

 

プレゼントは子どもだけのものじゃない

クリスマスのあたたかさは

冬の寒さをも超越した「温」かさ

 

かつてホームステイした

ホストマザーをふと思い出す

 

クリスマスに染まる街から

取り残された私にも

温かさは同じようにやってくる

 

ああこの優しさをこの穏やかさを

この静かで華やかな感動を

どうすれば伝えられるのだろう

無題

世界に色をつけたくて

思わず立ち尽くしてしまうような

鮮やかな色をつけたくて

 

挫けてもなお

何度でも信じ続けた

 

気がつけば

目の前に広がったピンクと青の空

その美しさに仰いだ

それなのに

夕暮れとともにそれは

どこかへ流れ出てしまった

 

いつまでたっても

実態はない

だから

つかんでもつかんでもつかみきれない

 

ただ色に包まれたいだけなのに

なぜそれが叶わないのか

 

ついには

どれだけおいしいものを食べたって

世界に色がつくことはなかった

 

色はつかない

私はからっぽ

変わり目

夏の中に

トパーズメッシュの風が吹き出した頃

目を細めたあの子は

何かを懐かしんだのか

それとも微笑んだのか

後悔したのか

 

結局何もかもわからないまま

グラデーションの季節はやってきた

 

終わりを嘆く人

訪れに歓喜する人

 

私だって

 

夏髪が頬を切ることも

木陰の切なさを感じることも

あと1年やってこないんだから

 

でもやっと甘いため息をつけるのは確かで

過ぎゆくものへ 暗くなりゆく日へ

未来の切なさを埋められるのも

正反対のロマンスを始められるのも

 

 

新しい季節の下で

新しくなったあの子はまた

目を細めるのだろうか

あの日のように

 

日に日にトパーズは深くなる

あの子も一緒に深くなる

 

まるで宝石のように

特別

 

恋と名付けられた瞬間

どこにでも転がっている

特 でも 別 でもない

ふわふわしたものに数えられてしまう

 

それに耐えられなくて

必死に他の言葉を探した

 

その思いが

世界にたったひとつのものであることを

証明するために

 

上品で格別に美味しい

お気に入りのレストランが

高級レストランと呼称された瞬間

陳腐さが漂ってしまうように

 

大衆的なものではない

私とあなたは世界に一人

 

今までもこれからも

私とあなたはたった一人しか生まれない

 

もうその時点で特別は約束されているはずなのに