春のおわり

 

失恋をした

こんな直截的な表現でよいのかと思う

でも、紛れもない失恋をした

 

全然人を好きになれない中で

人生で一番好きだったその人は

たぶん愛をくれなかった

もしかすると愛を注げない人なのかもしれなかった

けれどそれも、認めようとしない頭

 

何かのピースがほんの少しだけズレていて

それさえはまれば世界の誰よりも幸せだった

そのピースは何なのか

 

とても恨んだ

そのピースをはめてくれなかった人生と

見えない何かに

そして絶望した

これから生きなければならない明るい世界に

好きな人と結ばれることさえない世界に

課せられた荷は重い

 

悲しみは続く

悲しみが薄れるまでの間 この息苦しさから

逃げられないことに絶望する

早く楽にして

 

冷静に分析してくる人がいる

初めての気付き

もう楽になっていいのではないかとさえ思う

これからもあと50年くらい

この苦しみに耐え続けなければならない

 

次生きる時は

なんの躊躇いもなく 心から好きな人と

愛し愛されますように

盲目

 

私は恋がしたいだけだ

だれかに なにかに 熱中したいだけだ

まじりけのない気持ちの美しさと尊さ

何かに押し付けではない“愛”を注ぐということ

ただそれだけを求めているのだということに

愛と、その交換と、自分がこの世界に溶け込める余地

ただそれがほしいだけ

 

深まる秋の音楽に 私の思いは溶けてゆく

私の中に存在する虚像のきみ

彼と私は恋に落ちた

けれど それももう 過去のこと

真実

 

私が好きなあの人が

私のことを好きだったらいいのに

“過去も未来も” 関係なく

今日、今この瞬間に

好きな気持ちがあればいいのに

確認し合うことができなくても

真実は両思いならいいのに

 

何も起こらなくていい

もしも小説なら、読者にしかわからなくていい

誤解してもいい

 

季節に遅れて黄色くなった落ち葉

強い風に舞う

深い青の海しか映さない

振り返ってほしいと願う

 

私が好きなあの人が

私のことを思い出したらいいのに

ただ真実だけが両思いならいいのに

好き

「好き」を「好き」だと認識した時点で

それは走り始めてしまう

 

走らせなければならないのか

自ずと走り出してしまうのか

 

そのレールの突き当たりにはいつも

「付き合う」「結婚する」

が用意されている

 

走り出した「好き」を止めることはできない

前にも後ろにも進めずに

ただそこに置いておくことは

できない

 

「好き」「大好き」「愛してる」

ただそれだけを

ただそれだけを持っていたいのに

 

その気持ちだけが大切にされるべきはずで

思う存分 愛せるだけ愛したいだけなのに

 

そうすれば

それ以上でもそれ以下でもなく

うるんだお互いの目で繋がって

私たちは分かり合えるのに

 

好きになる責任をとらなければならないのなら

走り出してしまう「好き」にだって

責任をとってほしい

破片

愛してる愛してる愛してる愛してる

こんなに薄っぺらくて
こんなに重たい言葉を
こんなに私は叫びたい

なのに
世界は、君は、私は
それを許さない

いつも吸っているはずの空気が苦い
日を重ねるごとに
息をするごとに
死んでいく

君が輝きを増すたびに
私は暗さを纏う
それがどうしても不公平に思えて
嗚咽する

どうして私だけ
泣くことも叫ぶことも
愛することも
許されないのだろう

愛していると言った
愛していないと思った


大好きだと言った恋の目は
私の中に映った彼自身を見ていた


初めて電話をかけた日
嘘の理由と聞こえのいい言葉を並べ
コールは切れた


思いを文字に埋めることも
盲目的になることも
ついにはできなかった
それなのに眠れない毎日は続く


共通点を挙げる姿を見ながら
正反対の人間だと自覚する


この気持ちをどこに埋めればいいのか
知る術もないまま
好きだと言い切れずにただ心を奪われたまま
君の嘘に血を流す